コロナ禍のころから、発熱チェックのサーモカメラがお店の入口やテレビで身近になりました。画面の中で熱い人が赤く写るのを見て、「赤外線画像で赤い=熱い=危ない」というイメージを持った方も多いと思います。
ところが、太陽光パネルの赤外線画像では、赤いからといって故障しているとは限りません。色は温度だけでなく、カメラの設定や見る角度でも変わるからです。
実際に、「ドローンで撮ったらパネルが赤くなっていた」と言われ、洗浄とコーティングで約40万円の契約をしてしまったという相談が、国民生活センターや各地の自治体から紹介されています(栃木県の事例)。
この記事では、2016年から太陽光発電所の赤外線点検を続けてきた立場から、私たちが実際に撮った画像を使って、次の3つを説明します。
- 赤外線画像の「赤」が本当は何を表しているのか
- 異常ではないのに赤く(または青く)写るもの
- 「パネルが赤い」と言われたときに、契約の前に確認すること
1. 赤外線画像の「赤」は、何を表しているのか
赤外線カメラは、物から出ている赤外線の量を温度に換算し、その温度に色を割り当てて画像にしています。大事なのは、どの温度を何色にするかは、撮る人(またはカメラの自動設定)が決めているという点です。
下の2枚は、まったく同じ1枚の画像です。違うのは、色を割り当てる温度の幅(目盛り)だけです。


目盛りの幅を少し狭めるだけで、正常なパネルでも「真っ赤」に見せられます。つまり、色だけを見て「熱い」「危ない」と判断することはできません。
人の発熱チェックは「36℃台か、38℃を超えるか」という決まった基準で見ます。一方、太陽光パネルは日射の強さ・気温・風で全体の温度が大きく変わります。晴れた日中なら、正常なパネルでも40℃前後になることは珍しくありません。そのため、パネルの点検で見るべきなのは「赤いかどうか」ではなく、まわりのパネルやセルと比べて、何℃高いかです。
2. 異常ではないのに、色が変わって写るもの
見る角度:同じ発電所でも、斜めから見ると青や緑に
パネルの表面はガラスです。ガラスは、斜めから見るほど鏡のようにまわりの景色を映します。赤外線カメラで斜めから撮ると、パネルは空を映して、実際よりも冷たく(青や緑に)写ります。


右の画像は1枚の中で、奥のパネルは青や緑、手前のパネルは赤く写っています。温度が違うのではなく、カメラに対するパネルの向きが違うだけです。
反射(映り込み):太陽や人の体温が「熱い場所」に見える
逆に、ガラスに太陽が映る角度では、パネル本体の温度ではなく太陽の熱が映り込んで、その部分だけが白っぽく高温に写ります。これを「ホットスポットです」と言われるケースがあります。
映り込むのは太陽だけではありません。下の動画では、パネルの上に人の形をした白い像が写っています。これはパネルの故障ではなく、近くにいた人の体温がガラスに映ったものです。



映り込みを見分けるポイント
- 撮る角度や位置を変えると、高温の部分が動く・消える(本物のホットスポットは同じセルに残る)
- 連続して撮った画像で、隣のパネルへ移っていく
- 形がぼんやり丸い、または人や物の形をしていて、セルの区切りと合わない
- 同じ場所の可視画像(ふつうの写真)で、白くギラついて見える
影:木や建物の影がかかった部分は、温度が下がる
木の影がかかった部分は日射が当たらないので、温度が下がって青や緑に写ります。下の画像では、上側の木の影に沿って、パネルの色が波打つように変わっています。


ただし、影の境目では、一部のセルに負担がかかって発熱することもあります。影が原因かどうかは、時間帯を変えて撮り直したり、可視画像と見比べたりして確かめます。
3. 本物のホットスポットは、どう写るか
では、本当に注意が必要な異常はどう写るのでしょうか。下は、同じ場所を可視画像と赤外線画像で撮ったものです。


本物のホットスポットには、次のような特徴があります。
- セル1枚(またはその一部)の形に沿って、はっきり高温になる
- まわりのセルと比べて、温度差がはっきりしている
- 角度や時間を変えて撮っても、同じ場所に残る
- 可視画像では異常がわからないことが多い(だから赤外線で調べる意味がある)
このほか、パネルの一部がまとまって発熱するクラスタ異常(バイパスダイオードの故障など)や、列ごと発電していないストリング異常(コネクタの外れや断線など)もあります。いずれも、赤外線画像は「異常の手がかり」です。原因を確定するには、地上での確認や電気的な測定が必要です。
また、洗浄で直るのは、汚れや鳥のフンが原因の一部の発熱だけです。セルの割れやダイオードの故障は、洗浄やコーティングでは直りません。
4. 「点検が義務化された」は本当か
点検商法では、「法律で点検が義務化された」という言い方がよく使われます。国民生活センターも、こうしたセールストークで無料点検を勧められ、高額な契約を迫られる相談が増えているとして注意を呼びかけています(国民生活センター「太陽光発電システムの点検商法に注意」)。
実際には、点検や保安の義務があるかどうかは、FIT・FIP制度を使っているか、設備の出力がどれくらいかによって違います。たとえば出力10kW以上50kW未満の太陽光発電設備は、2023年3月から「基礎情報の届出」と「使用前の安全確認」が義務になりました(長野市「小規模発電設備に関する義務」)。これは設備の所有者が行う手続きで、突然訪ねてきた業者の点検を受けなければならない、という義務ではありません。
ご自身の設備に何が必要かわからないときは、設置した業者や保守を頼んでいる会社に確認するのが確実です。
5. 「パネルが赤い」と言われたら、契約の前に確認する5つのこと
- 赤外線画像と可視画像の両方を見せてもらう
あわせて、画像の横にある温度の目盛り(カラーバー)が何℃から何℃なのかを確認します。 - まわりのパネルより何℃高いのか、数字で聞く
「赤い」「熱い」だけで、温度差の数字が出てこない説明は要注意です。 - どのパネルの、どのセルなのか、場所を特定してもらう
発電所のどこにあるのかがわからない異常は、確かめようがありません。 - その原因が、洗浄やコーティングで直るという根拠を聞く
汚れ以外の原因(セルの割れ、ダイオードの故障など)は、洗浄では直りません。 - その場で契約せず、設置業者や複数の会社に相談する
訪問販売などで契約した場合、書面を受け取った日から8日以内ならクーリング・オフできることがあります(今治市 消費生活相談情報)。不安なときは、消費者ホットライン「188」に相談できます。
6. KENZAKI DR の赤外線点検では
私たちは、色の印象ではなく、数字・場所・原因でご説明することを大切にしています。
- 発電所の全パネルを撮影し、専門家が画像を判定します。反射や影による見かけの変化は、角度を変えた画像や可視画像と照らし合わせて確かめます。
- 判定した結果は、自社開発の IR Works AI で整理し、異常ごとに赤外線画像・可視画像・温度・位置をまとめて報告します。
- 洗浄や修理を売り込むことはありません。見つかった異常の現地対応は、地元の保守会社様に引き継ぐことも、当社で地上確認を行うこともできます。
- 料金は公開しています(撮影のみ〜1MW 80,000円〜、税抜)。詳しくは 太陽光発電所の赤外線ドローン点検 をご覧ください。
まとめ
赤外線画像の「赤」は、目盛りの設定や見る角度、反射や影でいくらでも変わります。赤い=故障ではありません。「パネルが赤い」と言われたら、何℃の差があるのか(数字)、どのパネルなのか(場所)、何が原因なのか(原因)の3つを確かめてから判断してください。
点検結果の見方がわからない、ほかの会社に言われたことが本当か確かめたい、というご相談もお受けしています。
参考:国民生活センター 見守り新鮮情報 第534号(2026年1月29日)/栃木県「太陽光発電システムの点検商法に注意」/長野市「小規模発電設備(太陽光・風力)に関する義務」/今治市 消費生活相談情報(2025年7月)
掲載している赤外線画像・動画は、当社が点検で撮影したものです(発電所が特定できる情報は掲載していません)。